ところでこの日の朝、出発前にごはん食べながらYouTubeで西園寺チャンネルの新作動画見てたら「関西の秘境駅といえばそう、武田尾駅!」って言ってて、まさに今からそこ行くんやけど!と笑ってしまった。秘境に向かうつもりなかったけど、今から秘境に向かうんやな私。旅に出るとき、たまにこういう偶然に見舞われます。行きしの電車で読んでた本に東尋坊が出てきて、まさに今向かってる先やん!てなったり
そこに滑り込んできた銀色の車体、もはやSFじみている。興奮するなという方が無理。大変楽しい歩き旅でした
最後に動画も。本当に一人でトンネル歩くの怖かったぁ……
そんなわけで、まずは西宮市側の生瀬駅からスタート。ご覧くださいこの大変イケてる駅舎。飾り気なくてシンプルで、でもちょっと神社の切妻屋根っぽい凝ったデザイン
廃線まで歩く間にも、しぶいトラス橋が見れます。こちらは現役のJR福知山線。この新線ができたことで、国鉄時代の線路は廃線となったわけです
しばらく車道のそばを歩き、ようやく廃線の入り口へ
廃線跡は武庫川に沿って続いているので、渓谷の景観も楽しめます
さっそく薄らと見える枕木たち。このあたりは人の出入りが多いせいか、かなり歩きやすい感じでしたが、奥に進むほどに枕木のデコボコもバラスト(線路に敷き詰められた石)も多くなってくるので、確実に歩きやすい運動靴のがよさそう
たびたび緑の中に現れる、おそらく鉄道設備の遺構。自然の中に埋もれていく人工物って、なんでこんなにもロマンを感じるのか。かつてここには確かに人がいて、人の営みがあって、人の声や思いや記憶にあふれていた、と考えると大変興奮する
昔の鉄橋もいくつか残っています。錆だらけなのがたまらない
今は子供連れでも歩けるようになっている廃線敷ですが、かつて1986年に廃線になった後、長いこと荒れるがままに放置されていたらしく、JRが立ち入り禁止にしているにも関わらず無断侵入が絶えなかったので、2016年にきちんと整備して公開に至ったそう。今でこそ西宮市が観光サイトでハイキングコースとして紹介してますが、たった10年前は正確なルート地図もなく、それでもハイキング好きやら心霊スポットを求める人やらが訪れていたんだとか
整備される前のこういう橋とか、渡るのめちゃくちゃ怖かったやろな…整備前ならではの景観の良さもあったやろけど
なんせこういうドデカ岩がごろごろしている渓谷のそばを走っているので、落下したら普通に大怪我
コース中、再三にわたって出現するJRの無慈悲看板。今でも原則自己責任でのハイキングとなってます
石垣もいい味だしとる。実際、土砂崩れとかもたびたび起こっていたらしく、風雨強い日の汽車運行なんか大変やったやろな
錆びついた速度制限標識。時速60kmまでOKとはなかなかすごい
川の対岸にもなんらかの遺構が
1つ目のトンネルが見えてきました
入り口付近は日の光で明るく見えるけど
ちょっと歩くとマジで真っ暗!!この写真はもう出口近くになってるのでトンネル内部が見えますが、中間部分はまったく光がなく真の暗闇です
しかも足元は枕木とバラストの石コロがたくさん残っているので、かなり歩きにくくスリリング。スマホのライトで行けるかと思ってたけど、いちおう懐中電灯を持っていっててよかった
暗闇や閉所が苦手なひとは一人で来ない方がいいかも。複数人で来てる人たちも、真っ暗なのが落ち着かないのか歩きながらずっとしゃべってて、その声がまたトンネル内部に反響して怖さを増幅させてるっていう。何も見えん反対側からこっちに向かって歩いてくる人の声が響き渡るのを想像してみてください、お互いすれ違う時の緊張感もなかなかのもんでした
その分、こうやって出口の向こうに景色が見えた時の感動たるや。心の底から「よかった…!」っていう安堵と、「うわーきれい!」っていう感激が一緒にやってきて、なかなか情緒を乱されます
この辺りから、より山の緑が深く濃くなってくる感じ
トトロいるもん!と言いたくなる緑のトンネル。ここを蒸気機関車が走ってたってすごいなぁ
木々にまぎれて立つ、木製電柱
緑の合間にのぞく人工物…興奮するぅ……
どんどん山が深くなっていきます。この辺は道幅もけっこう狭い。蒸気機関車に乗ってると、緑の中を駆け抜ける迫力すごかったやろな
川に沿ってカーブする鉄路。今でも春は桜、秋は紅葉がきれいとのこと。ここもかなりの景勝地だったんでしょうね
塀に浮かぶ1956の文字。もともとは1899(明治32)年の開通とのことで、かなり歴史ある路線
こういう「何かがあったな」っていうのだけでワクワクします。鉄道に詳しい方なら、これがなんの遺構かわかったりするんでしょうか
見えてきました2つ目のトンネル
垂れ落ちる蔦がさらに味わいを深めています。夜とか絶対怖いな、ここ。夜じゃなくても怖いのに
こちらのトンネル内部は煉瓦積みの壁もたくさん残ってました。しかし本当に中は真っ暗。とくにここのトンネルは暗かった。長さ400mぐらいで歩くのに5分ほどしかかかってないはずが、まさに永遠に続くかのような暗闇っぷりでした
枕木とバラストに足をとられながら、暗闇の中を歩くと見えてくる緑の光、本当に美しい。天然の美術館。道の先に見える人影は、赤ちゃんと小さい子供を連れた方々だったんですが、子供たちこんな真っ暗の中をよく通れたなとマジで尊敬です。子供時代の私なら絶対ムリ
だってこんなんですからね。子供だったら入りたいと思わない。この暗闇を抜けた先にある世界は、私が元いた世界じゃないかも…ぐらいの妄想が働きます。因習村に続いてるトンネルやろこの見た目は
こちらはおそらく風防とか、山からの落石倒木を防ぐ構造物か
上部には、おそらくメンテナンスとか何かで使ったかもしれない人用の小さなトンネルも
それにしても見事な渓谷です。急流に削られた岩が荒々しい。モンハンのバサルモスの肌って多分こんな感じやな
なにやら駅のホームじみた石垣も。単純にバラスト用の砕石かも
このあたりは両側が土塁のような岩壁に挟まれていたので、要塞感がすごい。毒ガス製造で知られる大久野島や、横須賀の猿島を思い出す雰囲気
赤レンガを覆い尽くさんとする植物
(静かなる興奮)
枕木に使う用の木材とかかな?今は自然に帰っていくばかり
3つ目のトンネルが見えてきました
こちらも内部の煉瓦造りが残されています
いやもう何回でも言いたいけどとにかく暗い。生きてきて知覚した中で一番暗い
しかしこのトンネルの先にはさらなる絶景が!
武庫川第二橋梁と呼ばれる立派な鉄橋。廃線後40年近くたってるとは思えない、堂々たる姿
またこの橋の上から眺める山と渓谷の景色がすばらしかった。狭い廃線路や閉塞的なトンネルを歩いてきたからこそ、一気に視界が開けてめちゃくちゃ気持ちいい
脇には現役の頃から使われていたらしき歩行用通路があって、公式整備前のハイキングではこちらを渡っていたそう。こわいな。見た目は大丈夫そうでも、どこが腐ってていつ崩れるかわからないし、下はそこそこの高さがあってそのまま川にジャボンですから
それにしてもやっぱ景色がすばらしく清々しい。昔は完全に海派だったのに、ここしばらくで山もいいなぁとなって以来、食わず嫌いを取り戻すかのように山を摂取している。しかし登山は嫌という
鉄骨にも負けず繁茂する梢。いずれはここも森に飲み込まれるのか
見事な景色でした。すすけて錆びついた赤色が、風雨にさらされながら汽車と人を運び続けたこの鉄橋の歴史を物語ってる
この先もいくつかトンネルを通りましたが、不思議と橋梁からこっち側のトンネルはめちゃくちゃ暗いわけじゃなく、ここまでの行程で真の暗闇トンネルを経験してきた私はもう余裕ぶっこいて歩けるレベル。人が多く賑やかで、小学生をたくさん連れた団体さんもいらっしゃいました
山の斜面をぶっこ抜くトンネル。たいした長さじゃないけど、それでも重機建機がなかった時代、手で掘り進めるのは大変な大工事やったやろうな
トンネルを出てすぐにあった、謎の斜め立坑。明らかに自然にできた穴じゃなかったけど、何に使われてたんやろか
近くには掩体壕みたいなへべちゃいトンネルも。なんか資材置いたりしてたとか?
ここからは武庫川を左手にして歩いていきます。私は生瀬駅側から歩いたけど、もしかしたら反対側の武田尾駅から歩いてくる人の方が多かったかも。このへんではたくさんの人とすれ違いました
ベンチっぽいものも置かれていて、のんびりした雰囲気。赤い橋梁を境にけっこう雰囲気が変わるのおもしろい。道幅もかなりゆったり
このカーブを汽車が走ってた姿、すごく絵になったでしょうね
石垣に根を張る木。あまりにもラピュタ
オッいいねぇとなった、水防っぽい設備
出口が見えるほどの短さのトンネルですが、余裕こいて懐中電灯なしで歩いてたら、しっかり枕木に足をとられ危うくコケかけました。油断と慢心が怪我につながる、そんな当たり前のことも自分の身を持って経験しないとわからない愚かな生き物、それが私
トンネルを抜けるとついに!家っぽい建物が!集落!うれしい!自然の中を歩くのは大変リフレッシュになりますが、やはり安心して休めそうな場所が見えると嬉しいものです
武田尾駅側は開けた場所があって、だから団体さんとかはこちら側で集合して生瀬駅側に歩いていくことが多いっぽい。海外の方もたくさんいらっしゃいました
すぅーーーごい緑。都市にも緑豊かな公園とかあるけど、そういうのとはもう色の深みが違う。冬になると雪すごそうと思ったけど、売店のおばちゃんによるとそこまで積もったりすることもないそう。ただ冬にハイキングにくる人は稀だとか。足元危なそうやもんね
そんなわけでゴールのご褒美に黄金の液体です。外で飲む酒ってなんでこんなに美味いのか
名物の猪肉を使った丼をいただいたんですがこれがもーーーめっちゃ美味しい!約2時間近く歩き通した体に最高の栄養!
美味しいご飯をいただきビールで喉を潤し、さあ帰るぞと武田尾駅に向けて歩きます。また何やら良さげな桁橋が
売店のおばちゃんが言うには、武田尾はかつて関西の軽井沢なんて呼ばれる避暑地だったらしく、温泉も人で賑わっていたとのこと。何軒も温泉宿があったみたいですが、今は廃業や休業で実質1軒のみ。わかる、わかるぞ、なんか岩手の台温泉と似た匂いをこの看板からも感じる。それこそ台温泉みたいに廃墟もいろいろ残ってそう
しばらく歩くと再びの鉄橋、そしてその上を走り込んでくる電車。現在のJR福知山線が再び視界に入ってきました。それにしてもこの立地、そら秘境駅や言われるわな
武田尾駅もかなり味わい深い駅舎。なかなかの勾配の階段をのぼってホームに向かうのですが
こちらが先ほど下から眺め見た鉄橋、そして
これが駅のホーム!すごい、かっこいい!!
鉄道のホームというか、なんかもうサンダーバードとかロボットとかそういうのが格納されてそう。ここから射出される機体は別名モグラって呼ばれてるな、隊員たちの間で
山ぶち抜きトンネルホーム。今まで訪れた駅の中でかっこよさ1位と言っていいかも
そこに滑り込んできた銀色の車体、もはやSFじみている。興奮するなという方が無理。大変楽しい歩き旅でした
最後に動画も。本当に一人でトンネル歩くの怖かったぁ……
おしまい!
0 件のコメント:
コメントを投稿