おはようございます。ゲストハウスで迎える朝は早い、うどん職人ほどではないが。昨晩かなりの酒を飲んだ身だったので、ちゃんと寝坊しました
前掲の写真の中庭を眺めながらいただく手作りの朝食。最高でした。お米が軽く茶碗三杯分ぐらいあったんですが、全部食べれてしまった。おかみさんのお母さんが宇陀で作っているというお米もとっても美味しかった。ごちそうさまでした
おかみさん旦那さんに見送られ、三輪駅から再び万葉まほろば線奈良行きに乗り込みます
奈良駅で大和路快速に乗り換え、やってまいりました郡山駅。郡山といえばやはり金魚。マンホールも期待通りのデザイン。金魚鉢のまわりの水が伝統文様の青海波でえがかれているところがポイント高い
駅から西側には郡山城があり、一帯は城下町として栄えたエリア。城の外堀が緑地として散策できるように整備されてました
右上の赤い線が、現在の外堀緑地。この地図では左が北
外堀の形に沿って続く散策路、犬の散歩してる人がいたりピクニックしてる人がいたり、大変のどか
町中にあるこういう道しるべも好きです。町名で何問屋が集まってたのかわかりやすい。このあたりの紺屋町は、藍染めを仕事とする職人たちが集まっていた町とのこと
町のど真ん中、道路をまっぷたつに裂くように紺屋川という水路が引かれていて、不思議な造りやなーと思ってたんですが、かつてはここで染め物を洗っていたそう
建物からして、古くから人が住んできた町なんやなと感じられます。1985年のサマーギフトの広告が見れるとは
街角には金魚の水槽が
紺屋町から南下して洞泉寺町に足を踏み入れ、見えてきました本日の目的地。何やら意味ありげなハート型の窓が目を引く、立派な建物
正面側はものすごい迫力の格子窓!
洞泉寺町はかつて洞泉寺遊郭と呼ばれた、政府公認の花街があった場所。最盛期には二百人近い女性が働いていて、遊郭が廃止になったあとも赤線として残ったものの、時代の移り変わりとともに店は減っていき、きちんと建物が残っている数少ないひとつがこの川本楼。大正13年築、花街最大規模の三階建て、しかも妓楼と当主家の住居が一体化しためずらしい造りでその威容を誇っています
一階、二階、三階と格子の幅がちがっていて、上階にいくほど光が入りやすいように格子の数が少なくなってるそう
夜に光を灯すさまは壮観やったやろな
しかも内部がなんと無料公開されています。ぜひともボランティアの方に内部を案内していただくのがおすすめ、めちゃくちゃ楽しめます。さっそく内部ツアーへGO
玄関右側には客引きが控えていたという小部屋
かつてはこの壁に女性の写真が飾られていて、そこからお相手を選ぶシステムだったらしい
入ってすぐの神棚
入り口正面の帳場。ガラス窓向こう、中庭を挟んで反対側が当主の住居という造り
棚には女性たちの名前が。お椀は台所に残されていたものだそう
ハート型の小窓から、やってきた客の姿が見える仕組み
右側にも小窓があって、やりとりができる。どういう会話がなされていたのか、想像すると楽しい
残された数少ない資料のひとつ、昭和期の客名簿
代金表も。ビールやちょっとした軽食もあったんやな
店の人がまとっていた法被。紋は当主家の家紋で、住居側の部屋のあちこちに見られました
一階の格子。確かに目が細かめです
二階への階段
外から見えていたハート型の格子窓。下は土間の台所で、煙をここから逃がしていたようです
広めの八間
さらに廊下の奥に狭い部屋が並びます
四畳一間
昨日行った大神神社のお札が祀られてました。タイムリー!とテンションが上がった
二階から三階へと上がる広い大階段。ここをどう使っていたのか、女性たちが客と一緒に使っていたのか、そのへんは資料が残っていないのでわからないそう。今はひな祭りのシーズンにひな壇として使用して、100体近いひな人形を飾ってるらしい
中庭を臨むガラス窓は、大正時代のままだそう。手作りガラス独特のやわらかさと儚さ、とても好き
三階への階段。本当にあっちこっちに階段があったり廊下があったり、迷路みたい
三階にも便所が
中は男性用の小便器しかなかったらしく、客が使う用だったのかなとのこと
ぽつぽつとガス灯が設置されていて、この建物はよく停電したためガスでも照明が点けられるようにしていたんだとか。ガス灯で照らされる楼閣内、めちゃくちゃ趣あったやろな。私に金があれば一夜限りのガス灯で照らす妓楼宿泊とかやってみたい
この格子窓をはじめ、竹細工を使った格子があちこちにありました。当主の趣味かな
先ほどの大階段を上から見下ろした様子。酔っ払ってたら下りるの結構危なそう
ところでこちらの妓楼、廃業したのちは郡山高校の学生の下宿先となってたらしく、各部屋に学生たちの置き土産というか、扉に貼っていた新聞やら何やらが残ってたりして大変おもしろい
よく見たら堀越二郎「零戦」の記事を見つけて大興奮。読了済みなんですが、ジブリ「風立ちぬ」にも出てきた個人的に衝撃だったシーン、戦闘機という時代最先端の機械を牛に牽かせて運ぶ描写がこの本にも出てきて、ウワー!これやー!となった思い出
女性のブロマイドが貼ってある扉も
他にも時代を感じる新聞記事が
かつて女と男がまぐわっていた四畳一間で、学生たちがどんな暮らしを送っていたのか、めちゃくちゃ興味がそそられる。そういう物語読みたい
階段の壁には松の木っぽいくりぬき。ほんと階段を上がったり下りたり建物内をウロウロしてるだけで楽しくて、私の後の客を案内してらっしゃったボランティアさんに「まだおったん」と言われました。ずっとおれるよこんな素敵な場所
女性たちが使っていた風呂場。当時ではめずらしいタイル張り、天井も高くなにやら優雅な雰囲気ですが、セメント跡から見て浴槽はかなり小さく、冬なんか寒かったでしょうねぇと案内の方と話してました
天井にはやはり家紋
一階トイレのドアも、当時のまま残されています。松竹梅をかたどったガラス窓、ドアにはやはり竹細工の格子。かつてはこの床の板敷きがガラス張りで、下に金魚が泳いでいたんだとか。風流〜!その頃のガラスが割れた状態で庭に置いてありました
屋敷の奥に蔵と、なんかでかすぎる灯籠(案内の方談、ちょっと言い方に笑ってしまった)
当主住居スペースはさらに凝った造り
客間から眺める中庭もすばらしい
上半分は夏用の風通しのいい造り、下は冬用の雪見障子
中庭には井戸があり、もしかしたら水を流していたのかもと。植わってる木は建築当時からのものだそう。花街の栄枯盛衰、幾多もの男と女の物語、そして学生たちの姿を見届けてきたんやろな
中庭から見上げる光景がまたすごい。遊郭建築って外向けに大きく窓を開くわけにいかんから、こうやって吹き抜けで採光してたんでしょうか
こちらは仏間の建具
なんか気づいたらまた二階に上がってきてました。建物に誘われてる。帰してもらえない。こわい
三階窓から見下ろした中庭。奥側の当主住居は二階建て
割れてないガス灯もありました
コーヒーをいただけるスペースがあったので、ゆっくりコーヒーを飲みつつ、今日はええ天気やけど風が強くて寒いですねぇ、でも昨日は三輪の方におって極寒やったんでまだマシに思えますねぇとかそういう話をしつつ、昔の郡山の写真を見せていただきました。下側の写真が、さっき通ってきた紺屋町の水路
めちゃくちゃ堪能しました。楽しかった。遊郭というとどうしても町の負の遺産ととらえられがちですが、町を作ってきた歴史の一部であることは間違いないし、この建物も取り壊されるかもしれなかった中、大和郡山市が買い上げてしばらく放置されていたところをボランティアの皆さんで掃除したりして維持しつづけ、大掛かりな耐震工事を経て保存されているという、まぁとにかく金と時間と人の手がかかるわけですが、歴史文化のひとつとしてなんとか残していただきたい
この近辺には同じような店が17軒ほどあったとのことで、界隈を歩き回ってみました。雨樋がすっかり鉢植えに
川本楼のすぐはす向かいにあるこちらも妓楼だったとのこと
こちらも同じく。ここと隣りのエステ店(健全)と川本楼以外は、すべて取り壊しが進んでるとのことです
遊郭の端にあたる源九郎稲荷神社。こじんまりとした境内ですが、有名な歌舞伎役者さんの名前が入ったのぼり旗もあったりして、日本三大稲荷のひとつに数えられる歴史ある稲荷神社とのこと
源九郎とは、文楽・歌舞伎の「義経千本桜」に出てくる白狐のことで、源義経が兄・頼朝に追われ奈良の吉野山に逃げてきた時、白虎がひとに化けて義経の側室・静御前を送り届け、義経と静御前を守った、というお話。義経に狐だと見破られるが、静御前の持っていた鼓がこの狐の両親の皮でできていたから、それを慕ってひとに化け二人を助けたのだと告げたら、義経が感謝を示し名を与えたんだとか。感動すればいいのか人間のエゴ〜〜と嘆くべきか難しいところ
扁額もかっこいいです
拝殿の手前に「祓戸」と書かれた立札があって、明らかに神聖な場所とは思ったんですが不勉強で何か知らず、あとで調べたら神社で参拝するときにまずここで拝んで体と心を清めるんですって。知らなかった。失礼いたしました
神社を迂回した奥側には、源九郎の名が刻まれた大きな石碑も
そのとなりに、一帯の地名の由来である洞泉寺がありました
お昼は町屋を改造したカレー屋さんへ。メニューにクラフトビールがあったらそりゃ飲むよね。奈良県宇陀のビールでした。奈良も最近クラフトビールに力入れてますね〜って店のオーナーさんとしゃべってました
お店自慢のスパイシーカレーが大変おいしかった。ビールと合わないわけがない
あと店の本棚にいろんな本が置いてあったんですが、わりと怪談とか化け物系とかあったり漫画「蟲師」があったりして、私は読んだことあるのについ小泉八雲の怪談本を手に取って読んでたらオーナーさんに「いいチョイスですね」と言われました。そしてこの本、小泉八雲の英文をわざとそのままに訳してておもしろかった。サムライがロングソードを振り回してました
今朝ゲストハウスで他のお客さんに「今日クリスマスイブだから」と言われるまで、クリスマスイブであることを完全に失念していたんですが、イブやねんからデザート食ってもええやろ!と調子のいい言い訳をしていただいたチーズケーキがめちゃくちゃ美味しかったという
そんなお店の向かい側も、めちゃくちゃ年季入った良き物件
町歩きを再開します。壁に貼られてるのはすべて金魚の品種
日本家屋と洋風建築のハイブリッド
キューピーになんの恨みがというぐらい黒ずんだキューピー
いい雰囲気の銭湯。地元の銭湯って感じで素敵です
歩き回りまくって(おもに室内をですが)楽しかった!おしまい
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